水上勉氏の「土を喰う日々」と、「精進百撰」。
(左)土を喰う日々:新潮文庫:ISBN978-4-10-114115-2
(右)精進百撰::岩波現代文庫:ISBN4-00-602025-2
なんでしょう?この清々しさは!
以前取り上げた梨木香歩さんの「家守綺譚」の時も同じような読後感でした。
水上勉氏のこの2冊は、精進料理の本だからか、なんとも言えない「潔さ」を感じる本でした。
私はこういう風な料理を好むんだなぁ。。。と思いました。
随分前ですが「ヨーガンレールの社員食堂」の本を読んだ時にも感じたのですが、ヨーガンレールさんや、家守綺譚の主人公の綿貫征四郎、そして今回の水上勉氏、この方々の凛とした生き様や暮らしぶりが、そのまま料理に現れていて、私が見習いたいと思っているスタイルがこれらの方々の中にあるのです。
「土を喰う日々」は、70歳を過ぎた晩年に心筋梗塞を患い、心臓の三分のニが壊死した水上氏が信州の里山に生活をうつし、畑でとれた野菜や山菜で精進料理を作って暮らしていた時の四季の記録です。
「精進百撰」のほうは、その精進料理のレシピ集を兼ねたエッセイのようになっています。
水上氏は9歳で京都のお寺へ入り、その後16~19歳まで隠侍をされていた時に精進料理を学んだそうで、その時の事も語られています。
本の中に出てくる料理のシンプルな味付けと、野菜やモノを大切に扱う心が、読んでいて気持ちが引き締まるように清々しくて、あぁ、私もこんな風に食物やモノを扱っていきたいと思ったのです。
物を大切にする気持ちは、自分なりに有ると思っていましたが、水上氏のこれらの本を読むと、ここまではとてもとても・・・。水上氏がこれほどまでに徹底した食事を行ったのも、残った心臓に負担をかけないようにし、旬に沿った暮らしを行い、与えられた残りの人生を全うして生きていこう!と決意されたからです。そこには厳しい自然の中に在りながら、四季折々の暮らしを楽しんでいらっしゃる様子が伺えました。
「土を喰う」について、水上氏が本の中で、
----何もない台所から絞り出すことが精進だといったが、これは、つまり、いまのように、店頭へゆけば、何もかもが揃う時代とちがって、畑と相談してからきめられるものだった。ぼくが、精進料理とは、土を喰うものだと思ったのは、そのせいである。旬を喰うことはつまり土を喰うことだろう。土にいま出ている菜だということで精進は生々してくる。----
と書かれています。
また、「精進百撰」では、「土を喰う日々」を婦人雑誌に載せていらした時のエピソードも書かれていました。
----印刷の事情もあって、編集者は三ヶ月早くに畑と相談もせずに旬を予測して特集号を組んでいた。そのため五月の筍は五月にたべるのが旬だけれど、三月にスーパーで買って間に合わせたのであった。したがって嘘になる。これが気に入らなかった。----
水上氏はその後、編集部と交渉して、自分で収穫した旬の物を調理し、撮影したものを2年分蓄えてから、その旬に合わせて雑誌に載せたそうです。
たしかに今は日本中、世界中の食物がスーパーで買うことが出来るようになりました。
旬もそれぞれの各地で違っていて、一年中いろいろな野菜や果物が揃っています。
自分の住む地域の野菜や果物の旬がいつなのか、判らなくなるときもあります。
実際に畑を持ち、自分で旬の野菜を収穫出来るのは、とても贅沢な事なんだなぁと感じました。
それでも日本は四季がある国。
日本に住んでいると、その季節季節の食べ物が出まわるのを待ちわびている気持ちは、それぞれに多少あると思うのです。
水上氏の掲載レシピを読者が読む頃には、その文章や写真から旬を感じ、読者の食卓にも旬の食材で作った献立が上がっていたと思うのです。
畑があっても無くても、それぞれの旬を楽しめたらいいなぁ・・そう思いました。
ところで、私は今のところ「完全菜食」ではないので、肉も魚も献立に載せます。
畑で採れたお野菜をどのように料理しようかとまず考え、それに少しのお肉かお魚、少しの豆腐、少しのお米などが献立に加わります。
その畑なのですが、冬中献立作りに一役かっていた大根に蕾が見えるようになってきました。
太い大根から収穫していったので、最近は細いものや小さなものばかりになっています。
今朝収穫して、洗って処理中の大根
だんだんと小く歪なものばかりになっています。
だんだんと小く歪なものばかりになっています。
大根の葉
農薬を全くやらなくても、虫食いも無く、とても綺麗な大根葉を何ヶ月も食べることができました。
今日は、大根菜は炒め煮にして、大根はふろふき大根にしようと思います。
私の畑の場合、たくさんの種類の野菜が有るわけではありません。
今だったら、まだ残っている大根、ブロッコリー、キャベツが少々。。。。
精進料理とまではいきませんが、水上氏の「畑と相談して・・・」をちょっとだけ共有出来て、なんとなくほっこりとした気分と、収穫できる有り難さが感じれる本でした。
※庭、及び畑に関するPOSTは今まで、Fuji's flower gardenに載せていましたが、サーバーの都合により5月にホームページが終了するのに合せ、今後はこのブログに載せていくことに致します。
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